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拡散型圧力波治療について:Radial pressure wave therapy

​川田整形外科では2021年8月より体外衝撃波治療の一つである拡散型圧力波治療器 MP100(STORZ MEDICAL 社製)を高知県内で初めて導入いたしました.

1.はじめに

2018/8に難治性足底腱膜炎(足底筋膜炎)に対して集束型体外衝撃波治療器(DUOLITH(デュオリス) SD1)を導入し,良好な成績を収めてきました.集束型(​SD1)は治療効果が高く,また衝撃波の出力が強いため治療に関して管理制限がありました.

今回,集束型(SD1)より出力を軽減させ,リハビリテーションの中で使用できる機器として拡散型(MP100)を導入しました.これにより様々な痛みに対して手軽に体外衝撃波治療を行うことができ,疼痛の軽減を図ることが可能になりました.

またMP100は疼痛のみではなく,関節拘縮の改善にも有効とされており集束型にはないメリットとなります.

治療を試されたい方は診察時に『拡散型衝撃波を試してみたい』とお伝えください.

2.拡散型圧力波とは?

 

体外衝撃波治療は2種類の治療法があり,1つは当院でも以前から行われている集束型衝撃波(FSW:Focus shock wave)を用いた方法と,2つ目は今回導入された拡散型圧力波(RPW:Radial shock wave)になります.両治療機器ともに2021/8時点で高知県で導入しているのは当院のみになります.

 

拡散型体外衝撃波(RPW)装置は筋や腱,軟部組織に生じる膝の痛みや腰の痛み,肩・肘・足などの様々な痛みを軽減させる物理療法機器の一つです.従来の集束型体外衝撃波(FSW)と比べ衝撃波の出力が低いため,理学療法士がリハビリテーションの中で使用可能になりました.これによりさらに治療効果が高いリハビリテーションを提供することが可能になりました.

RPWは従来スポーツ現場での低侵襲治療に使われてましたが,近年,病院施設での整形外科患者に対して使われるようになってきました.

FSW:集束型衝撃波

RPW:拡散型圧力波

3.今まであった体外衝撃波治療とは何が違う?

 

 従来のFSWは衝撃波の出力が非常に高く,骨に影響を与える可能性(偽関節や難治性骨折の治療に有効)があることから医師管理のもとで実施が必要でした.一方でRPWはFSWと比較して出力が1/100と低いため骨に影響を与えることはないとされ,理学療法士がリハビリテーション内で物理療法と同じように実施が可能になりました.

 

 FSWはエネルギーを収束させるため治療範囲が狭く,問題となっている箇所へピンポイントで照射する必要がありましたが,RPWはエネルギーを拡散させるため治療範囲が広く,問題となっている箇所へ照射を行いやすいというメリットがあります.

 

 またFSWは適応が骨・腱の疾患を中心としていますが,RPWでは腱,筋と特徴が異なります.これは照射強度と照射範囲が影響しており,FSWは50mmと深層まで治療が可能で,RPWは20mmと表層の治療に向いています.RPWは表面が一番エネルギーが高く,深部にいくにつれてエネルギーが拡散し減衰するという特徴があります.一方,FSWは焦点距離を調節することで特定の場所を集中的に治療する特徴があります.


 

 RPWは照射装置についてあるトランスミッターが取り換えが可能で,交換することで疼痛治療の他に筋のリラクゼーションや拘縮治療などに対して幅広い治療が行えるようになります.

 中でも拘縮(関節が硬くなって動かなくなった状態)治療に関してはいままでの衝撃波装置(FSW)では治療効果が乏しかったため,現在有効な治療方法の一つとなっています.

集束型と拡散型の照射深度

拡散型のトランスミッター交換

左半分がFSWで深部に高出力,右半分がRPWで浅部に広範囲で出力される

筋膜リリース用のトランスミッター

水中での拡散型圧力波の見え方(クリックして再生)

4.対象疾患

 

 ※変形性膝関節症(局所痛),アキレス腱炎(アキレス腱症),足底腱膜炎(足底筋膜炎),シンスプリント,膝蓋腱炎,オスグッド病,五十肩(肩関節周囲炎),テニス肘,ゴルフ肘(上腕骨内・外側上顆炎),石灰沈着性腱板炎,腰痛,筋挫傷など

 

※変形性膝関節症などは変形を改善させる効果はありません.局所(筋・腱など)で痛みを生じている箇所での疼痛軽減に効果があります.変形を改善させるためには高位脛骨骨切り術などの手術が必要になります.

 

5.治療の特徴

 

1.1回の治療時間が約10分程度でその他のリハビリの支障になりにくい.

2.RPWと運動療法を組み合わせることで治療効果が高くなる.

3.即時的な治療後の疼痛軽減がみられる.

4.痛みの軽減だけでなく関節拘縮の改善にも効果がある.

5.筋系へのアプローチが可能

6.治療期間は週に1~2回.

7.副作用があまりみられない.

8.FSWと同様に麻酔を必要としない.

6.治療の副作用は?

 

 治療において大きな副作用はほとんどないとされますが,見られる副作用として照射痛や照射後の疼痛(鈍痛や筋肉痛),皮下出血,腫脹,発赤などが出現することがあります.


 

7.拡散型体外衝撃波治療の費用は?

 

 RPWの治療費用はリハビリテーション費用に含まれているため別途費用がかかることはありません.FSWでは足底腱膜炎では保険適用で5000~15000円/3回,それ以外の疾患は自由診療で8000円/1回となっています.

 

8.得られる治療効果は?

 

 RPW,FSWともに高い除痛効果が得られることができます.RPWは同一部位に連続照射を行うと皮下出血を生じやすく,同一部位に照射する場合はFSWが推薦されます.またFSWでの治療報告では照射強度が高いほど治療効果が高いとされます.RPWは照射強度が上がれば照射時痛がFSWより強く出現するため局限性の場合はFSWをお薦めします.

 

 RPWは除痛以外にも関節の拘縮に有効であるため,膝・肘が曲がらない,伸びないなどの症状に対して改善が期待できます.また術後の組織の癒着による可動域制限にも効果があるため,継続して行うことで可動域の改善が見込めます.

 

9.治療の流れについて

 

1.診察を行い,リハビリテーション開始の指示をもらいます.

2.リハビリテーション開始時に問診や評価から疼痛の症状を確認し,痛みを生じている問題個所を触診や動作により特定していきます.

3.低レベルの照射から治療を開始します.反応を見ながら徐々に出力を上げていきます.痛みに耐えうる出力まで上げていきます.

4.最初に圧痛を除去するトランスミッターで局所の痛みに対して治療を行い,次にその疼痛部位に関係する筋肉に対してトランスミッターに変更して筋のリラクゼーションを行います.

5.拘縮改善を目的として場合には上記に加え,癒着改善を目的としたトランスミッターに変更して治療を行います.

6.複数回の治療を必要とする場合は一定の期間の治療間隔を空けます.週1~2回の実施が目安となります.

 

RPWの治療では1回の治療ですべての痛みを除去することができない場合があります.基本的には複数回の治療を繰り返し行うことで組織の修復を行い,疼痛を軽減させていきます.

 

早期に痛みを軽減させたい場合には,出力が高いFSWの方が治療効果が見られやすいとも言われているため,必要に応じてFSWを選択した方が良い場合もあります.詳しくは診察時に主治医にご相談ください.

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