変形性膝関節症の治療と手術についての新聞記事2017

正常関節の再現へ

​Q.下肢の治療対象の部位と役割は?

A.関節外科医の目標は疾病や外傷で損なわれた「正常関節機能・機構の再現」です.下肢は股関節に始まり,膝・足関節にそれぞれに関節軟骨の病態や要因が異なります.

 股関節や足関節は骨の形状で安定性を得ていますが,膝関節は骨よりも半月板や靭帯,筋肉などの軟部組織で安定しています.また,歩行時に関節にかかる荷重は体重の2~3倍で,走行時や階段昇降では5~6倍になります.このため,上下肢関節の中で最も傷害を受けやすいと言えます.

Q.膝の治療は難しそうですね.

A.スポーツ選手の半月板損傷の場合は,部分切除術で短期的には症状が改善しますが,半月板の荷重分散機能が破綻してしまい,術後の関節症の進行が避けされません.当院では鏡視下半月板縫合術を中心に,半月板の機能をできる限り温存します.

 膝関節における前十字靭帯は自然治癒能が低く,50%を超えた損傷を受けると前十字靭帯不全(欠損膝)になり,無理をすれば,半月板損傷や関節軟骨損傷になります.当院では,自分のハムストリングス筋腱を移植する手術をしています.

Q.変形性膝関節症とは?

A.関節軟骨は骨同士がこすれ合わないよう,クッションの役割を果たしていますが,血行はなく,一度傷付くと修復されにくい.その軟骨が擦り減り,関節炎や変形を生じて痛む病気です.1次性と2次性に分けられ,1次性は明確な原因がありません.2次性は骨折や靭帯損傷,半月板損傷などの外傷が原因で起こります.変形性膝関節症の多くは1次性です.日本人はO脚が多いため,内側型の変形性膝関節症になりやすく,悩んでいる人が1000万人,潜在的には約3000万人に達すると言われています.

Q.どんな治療をしますか?

A.診断はX線画像とMRI(磁気共鳴画像化装置)で行います.治療には,従来からの保存療法と手術があります.一般的に,大きな病院では手術が優先され,小さなクリニックではリハビリや注射などの保存療法を延々と続け,手術のタイミングを逸することも少なくありません.私は患者さんの症状とニーズを理解したうえ,少しでも手術しなくて済むよう,あるいは手術のタイミングを逸しないよう,最良の治療方法を選択し,どちらかに偏らない治療を行います.

 保存療法には,膝関節を支える大腿四頭筋を鍛える理学療法,消炎鎮痛剤や貼付剤・関節内注射などの投薬治療,O脚の矯正を目指す外側楔状型足底板や膝サポーターなどの装具療法があります.しかし,保存療法では改善しなかったり,患者さんが若い場合は手術が必要です.

内視鏡手術で負担少なく

​人工関節手術年間で8万件

​Q.O脚は,どう手術しますか?

A.従来は,すねの部分の太い脛骨と,細い腓骨の一部を切り取り,O脚を補正する「外側楔状閉鎖型骨切り術」をまず行いました.その後,変形が進むと,傷んだ関節の一部を切り取り,金属などの人工物に置き換える「人工関節手術」を考える流れが通常でした.しかし,従来の手術は骨を切ると下肢が短くなるうえ,骨が癒合して装具やギプスなしで歩けるまで2~3か月かかりました.今では,入院期間が長いうえ,難易度も高い骨切り術を避け,入院期間が短い人工関節手術を最初から選ぶ傾向にあります.現在,国内の人工関節手術は年間約8万件ですが,骨切り術は7000例にとどまります.

 

Q.近年の内側楔状開大型骨切り術とは?

A.2003年に国際研究グループが開発しました.脛骨の内側に切り込みをいれて切れ目を広げる方法でO脚を矯正します.時間と共に本物の骨に置き換わる人工骨を挿入し,金属プレートで固定することで,従来の骨切り術と比べ,早期に退院できます.手術翌日から可動域訓練と歩行訓練を始め,3週間以降に全体重をかける「全荷重歩行」の訓練をします.

 術後約1年たつと,プレートとねじを取り外します.この時関節鏡(内視鏡)検査で,すり減った部分の軟骨の再生具合を確認します.当院では,骨を切る前に,軟骨再生を促すマイクロフラクチャーという骨髄刺激処置も行います.

Q.変形性膝関節症はどう手術しますか?

A.当院では人工関節手術ではなく,自分の膝を温存することができる骨切り術を行います.これは下肢が一直線になるよう,膝関節を安定させ,関節内の軟骨修復を誘導する再建手術です.

この記事は2017年2月に毎日新聞に掲載されたものを一部文字起こししたものです.

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