top of page

1.半月板について
 

半月板は膝関節の中にあり大腿骨と脛骨の間にあり,フカヒレのような三日月様の形をしています.半月板は関節の内側と外側にそれぞれあります.

MM:内側半月板 LM:外側半月板

MTP:内側脛骨関節面 LTP:外側脛骨関節面

Perelli S, Morales Avalos R, Masferrer-Pino A, Monllau JC. Anatomy of lateral meniscus. Ann Joint 2022;7:16.

​内側

​外側

半月板

半月板

Wadhwa, Vibhor & Omar, Hythem & Coyner, Katherine & Khazzam, Michael & Robertson, William & Chhabra, Avneesh. (2015). ISAKOS classification of meniscal tears - Illustration on 2D and 3D isotropic spin echo MR imaging. European Journal of Radiology. 85. 10.1016/j.ejrad.2015.10.022. 

半月板の役割は①荷重分散,②関節の安定化,③関節面の適合性確保,④関節の滑潤,⑤軟骨への栄養補給,④関節運動への関与(固有受容器としての役割)などがあります.

半月板の成分は湿重量の72%が水分で28%が細胞外基質(コラーゲン・ヒアルロン酸・プロテオグリカンなどのこと)や細胞などの有機物で構成されています.

この細胞外基質は半月板の外側と中心で異なっていることが特徴です.

 

半月板の外側(辺縁部)ではコラーゲンⅠが80%以上を占め張力に抗する特徴があり,中心部はコラーゲンⅡとプロテオグリカンの割合が高く圧縮ストレスに強い構造になっています.半月板は表層から三層構造になっており,表層は様々な方向からのストレスを分散させるようなランダムな線維構造をしており,半月板の大部分占める中心部は圧縮ストレスを分散するような円周線維構造になっています.

Cui JH, Min B-H, Collagenous fibril texture of the discoid lateral meniscus, Arthroscopy 2007;23(6):635–41.

 内側半月は外側半月と比較すると前後の長さが長いとされます.(内側>外側)また円周長も長いとされます.そのため内側はC型,外側はO型の形をしていると言われます.

​中節

​中節

後節

後節

前節

前節

前角

後角

前根

前根

LaPrade, Christopher & Foad, Abdullah. (2015). Biomechanical Consequences of a Nonanatomic Posterior Medial Meniscal Root Repair. The American Journal of Sports Medicine. 43. 912-920. 10.1177/0363546514566191. 

半月板は場所により呼び方が存在し

内側半月板は前角,前節,中節,後節,後角

外側半月板は前節,中節,後節

に分類される.海外ではそれぞれが前角,体部,後角ともよばれる.

 

半月板は脛骨の関節面を覆っており内側は約60%,外側は約80%覆っているといわれ外側がより多く半月板が関節面を保護しています.

 

半月板は関節の中心に付着部があり前十字靭帯を囲むように付着しています.この付着部は大きさの順に

内側半月板前根付着部(medial meniscus anterior root attachment)(100%とすると)

内側半月板後根付着部(medial meniscus posterior root attachment)(約70%)

外側半月板前根付着部(lateral meniscus anterior root attachment) (約70%)

外側半月板後根付着部(lateral meniscus posterior root attachment) (約50%)

 

となり,内側の付着部は強固になっています.この中でも特に内側半月板後根付着部の損傷(内側半月板後根損傷:MMPRT;medial meniscus posterior root tear)は近年重要視されており内側半月板機能の重要な役割を担っています.

 

半月板には様々な筋腱・靭帯が付着しており半月板の可動性に影響を与えている.

外側半月板には膝窩筋腱,内側半月板には半膜様筋腱の一部などが付着し,これらが半月板後方に付着するために膝関節屈曲時に半月板を後方へ牽引させ,関節に挟みこまれないように作用しています.

 

また外側半月板は外側側副靭帯などとの結合がないため内側半月板と比べ外側半月板自体の動きが大きい特徴があります.内側半月板は周囲の靭帯や関節包,内側側副靭帯深層と結合しているため動きが制限されるため小さくなります.

 

半月板は膝関節の曲げ伸ばしで内側半月板は約9mm,外側半月板で13mm後方に動くとされています.

半月板への血行は膝窩動脈から分かれる内外側膝動脈の分枝から血液供給を受けます.その分布は外側にある滑膜から約20%程度付近まで分布していると言われています.

 

組織細胞も血管が分布している範囲(外側1/3程度)までは線維芽細胞様細胞で,血管がない部分(中央から内側にかけて)は軟骨様細胞で構成されています.そのため血管や線維芽細胞用細胞がある外側部分では修復能力が高いとされています.また加齢による半月板への血行も変化すると言われており,より辺縁に限局した血行動態に変化します.

 

神経も血管と同様な走行をしているとされており,内側部分には神経が分布していないため自覚症状がなく半月板を損傷することがあります.

外側上膝動脈

側上膝動脈

外側下膝動脈

側下膝動脈

中膝動脈

膝窩動脈

Dua, Anahita et al. “The Impact of Geniculate Artery Collateral Circulation on Lower Limb Salvage Rates in Injured Patients.” Annals of vascular surgery vol. 30 (2016): 258-62.

​半月板に流れる毛細血管の様子.

Arnoczky SP, Warren RF: Microvasculature of the human meniscus. Am J Sports Med 1982; 10:90-95

半月板は上記に説明したように領域により血行が異なるため,これは半月板の治癒能力にも深く影響しています.

①血流は豊富な辺縁領域(半月板の外側:red-red zone)は血流が豊富なため損傷しても治癒が可能な場所とされています.

②辺縁部と中心部の間にある領域(red-white zone)は損傷形態によっては修復が望める箇所と言われています.

③半月板中心部の無血管領域(white-white zone)は血流による修復が生じないため修復されない領域とされています.

van Schie P, van der Lelij TJN, Gerritsen M, et al. Intra-operative assessment of the vascularisation of a cross section of the meniscus using near-infrared fluorescence imaging. Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy : Official Journal of the ESSKA. 2022 May;30(5):1629-1638.

​半月板の血行について.red zoneでは血管は豊富だかwhite zoneではほとんど血管はみられない.

Karia M, Ghaly Y, Al-Hadithy N, Mordecai S, Gupte C. Current concepts in the techniques, indications and outcomes of meniscal repairs. Eur J Orthop Surg Traumatol. 2019 Apr;29(3):509-520.

内側半月板は後脛骨神経の関節枝と閉鎖神経および大腿神経の末端枝によって神経支配されます。

外側半月板は、後脛骨神経、大腿神経、総腓骨神経の枝から神経支配を受けます。前角と後角の神経支配は、半月板本体よりも大きいと言われており,この理由として膝関節の運動時に半月板の移動や圧縮に伴う前角,後角へのストレスが生じるためと言われています.

2.半月板損傷とは?

 

一般的に健康な膝で起こる半月板損傷は,急激な方向転換時に大腿骨と脛骨で起こる圧力と捻じれによって引き起こされると言われています.半月板が挟みこまれてねじ切られる感じをイメージしてもらうとわかりやすいと思います.

 

半月板損傷は幅広い年齢に発生し,その病態も多岐にわたることが多いことが特徴です.

半月板損傷を大きく分けると①半月板損傷単独損傷,②ACL損傷との併発,③退行性変化などに分けられます.

半月板断裂は全層に及ぶ完全断裂と不完全断裂に分けられ,また断裂の形状から①縦断裂(longitudinal tear),②バケツ柄断裂(bucket-handle tear),③水平断裂(horizontal tear),④弁状断裂(flap tear),⑤横断裂(radial tear),⑥オウム嘴状断裂/斜断裂(parrot-break tear/oblipue tear),などに分類されます.

2.半月板損傷とは?

損傷を放置すると

①横断裂はオウム嘴(くちばし)断裂に

②縦断裂はバケツ柄断裂に

③水平断裂はフラップ断裂に

進行する可能性がある.

Babu, Jacob M. et al. “Diagnosis and Management of Meniscal Injury.” Rhode Island medical journal 99 10 (2016): 27-30 .

3.半月板損傷の症状

3.半月板損傷の症状
 

半月板はしゃがんだ時や膝を捻じったり,踏み込んだりしたときに「グチッ」となったりしてそのあと膝の曲げ伸ばしが困難になったり,膝が腫れる場合や痛みを伴うことがあります.もちろん音がせずに損傷していることもあるため,膝を曲げると違和感がある,正座の時に膝裏が痛い,しゃがみ込みが痛みのために急にできなくなった,膝に物が挟まっている感じがあるなど様々な症状があります.半月板は血行がない部分での損傷は痛みがないため知らない間に損傷している場合があります.

4.半月板損傷の原因

4.半月板損傷の原因

 

半月板損傷の受傷機転としては主には切り返しが多いスポーツなどで起こることが多いとされ,バスケットやサッカー,バドミントンなどで多く見られます.また中高年では加齢や変形による半月板の変性に伴い日常生活の動作や軽微な外傷で損傷することもあります.大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)のストレッチをしていて”グチッ”と音がなり損傷した例もあるので日常生活の何気ない動作で損傷することがあります.

 

半月板損傷に関する要因としては加齢,肥満,下肢アライメント,筋力,関節弛緩性,円盤状半月,職業や活動性などが挙げられています.

 

①ACL損傷に伴う半月板損傷について

ACL損傷(前十字靭帯損傷)時に半月板を同時に損傷することが多く見られその大半は外側半月板を損傷することが多く報告されています.これはACL損傷時に膝がKnee-in(膝が内側に入った状態:外反膝)になることが原因とされています.

またACL損傷を受傷してそのまま長期間放置していた場合には内側半月板に頻回に負荷がかかることから内側半月板損傷を合併することが報告されています.

急性ACL損傷では内外側ともに縦断裂が多いとされ,慢性ACL不全では外側は縦断裂が多く,内側はバケツ柄断裂が多いとされています.

慢性ACL不全ではACLが存在しないため脛骨を前方に移動することを防げません.そのため日常生活の動作において大腿骨が後方に,脛骨が前方に移動する頻度が多くなるため,半月板の後角がストレスにさらされることが多くなります.これらのストレスは正常膝の約2倍あるとされます.

ACL不全における半月板損傷のリスクとして重要なことはACLが損傷してから手術するまでの期間とされています.この期間が長くなればなるほど半月板が損傷するリスクが高くなります.ACLが損傷して12か月経過するとリスクは3.5倍なるとされ,ACL損傷から手術までの間に膝崩れが5回起こすと内側半月板損傷のリスクが約3.5倍になると言われています.

このためACLが損傷した場合には放置するのではなく,なるべく早く手術を行うことで内側半月板損傷を予防することが可能になります.これは長期的に見ると変形性膝関節症を予防する上で最も重要なことであるといえます.

 

②半月板の形態学的異常(円板状半月)

半月板の形態学的異常の代表例に円盤状半月というものがあります.これは通常半月板はC型をしていますが,円盤状半月は中心に窪みがなく円盤の形をしています.これは日本やアジアを中心に多いとされ,その割合は約40%でそのほとんどは外側半月板で生じるとされています.完全型円盤状半月は約15%,不完全型円盤状半月は約85%の割合で発生するといわれています.特に片側に完全型円盤状半月がある場合の反対側に完全型円盤状半月を有している割合は約95%と完全型円盤状半月は両側性であることが多いとされています.円盤状半月は正常の半月板に比べコラーゲン線維が薄く,円周状の配列も低形成のため圧力を分散させにくい特徴がある.辺縁部(外側)は正常の半月板と同様にコラーゲンの円周上配列が見られるため圧力分散機能は保持させている.そのため手術では中心部は切除し,辺縁部が損傷している場合は縫合するような方法を行います.円盤状半月損傷では通常の半月板損傷の人と比べて年齢とBMIが低く,女性に多いという特徴があります.

 

外側円盤状半月の手術後は切除された部分での関節軟骨の接触圧が増加するため離断性骨軟骨炎(OCD:osteochondritis dissecans)のリスクが高くなるため,活動量は徐々に増やしていく必要があります.



 

③半月板の退行変性と内側半月板後根損傷(内側半月板後根損傷:MMPRT;medial meniscus posterior root tear)

 

半月板の退行性変化は思っている以上に高く,50歳以上では約30%に見られるとされ年齢が高くなるにつれて存在が高くなると言われています.

退行性変化では内側損傷が約65%,外側損傷が約25%の割合であるとされ,部位としては中~後節で約60%以上の損傷を生じていた.この中でも後角の横断裂は割合が多く,約30%程度に見られるとされ,近年この後角横断裂や後根断裂(root tear)が問題視されています.

これらが損傷すると半月板の衝撃吸収機能であるHoop strainが機能不全に陥いります.これは半月板が垂直方向へのストレスを半月板線維の特徴を活かして円周方向にストレスを受け流すことで関節軟骨へのストレスを軽減しています.後根が断裂すると半月板が外へ逸脱するために,これらの機能が役割を果たせなくなります.そのため関節軟骨への接触圧が増加し,さらには脛骨の外旋,外方偏位を助長させることが報告されており,さらに膝の変形と半月板の退行変性が進行する可能性があります.

 

内側半月板後根単独損傷例は比較的珍しいとされており,臨床では内反膝(O脚)や軟骨損傷などを変性を伴っている症例に多く見られます.膝の変形により長期的に半月板の後根へのストレスが加わった結果,損傷する可能があります.

単独で損傷する場合は急激に足を踏ん張ったときなどに膝の裏側に痛みを生じて発生することが多いとされています.


 

退行変性の危険因子として,以下のものがリスクをあげる要因として

①年齢:60歳以上 約2.3倍

②性別:男性>女性 約3倍

③しゃがみ込み動作:1日1時間以上 約2.7倍

④階段昇降:1日に30階分階段昇り動作 約2.3倍

⑤BMI:BMI25以上

⑥長時間の立位,歩行:1日2時間以上の立位,歩行 約1.6倍

⑦歩行距離:1日3.2km以上 約1.6倍

⑧重量物の運搬:1週間に10㎏を10回 約1.89倍

 ①ACL損傷に伴う半月板損傷について
 ②半月板の形態学的異常(円板状半月)
 ③半月板の退行変性と内側半月板後根損傷
5.半月板損傷の診断について

LaPrade et alによる半月板後根断裂の分類

Perelli S, Morales Avalos R, Masferrer-Pino A, Monllau JC. Anatomy of lateral meniscus. Ann Joint 2022;7:16.

5.半月板損傷の診断について

 

半月板損傷の診断には症状やMRI,徒手検査などを用い総合的に判断します.

半月板損傷の典型的な症状としては①関節水腫や血腫(膝に血が溜まっていること),②膝関節の可動域が悪い,③関節内でのひっかかりやロッキング症状(何かが挟まって膝が動かない状態)などがあります.

また徒手検査では膝関節裂隙(関節の隙間)の圧痛,②McMurray test,③Apley testなどがあります.

6.半月板損傷の治療について

6.半月板損傷の治療について

半月板損傷の治療については保存療法と手術療法があります.

 

①半月板損傷の保存療法

膝の曲げ伸ばし時にひっかかりなどがあまり見られない状態であれば,関節注射や痛み止めなどの内服薬,リハビリテーションを行いながら経過を見ていきます.痛みが悪化せずに日常生活を取り戻せる状態であれば手術を必要とすることはありません.しかし,違和感がなくなるまではリハビリテーションなどを継続して行く必要があります.

膝関節の変形を伴っている場合には軟骨の損傷度合いを考慮して手術(骨切り術)も視野にいれておく必要があります.これは半月板の痛みが収まっても,膝の変形により常に半月板に負荷がかかっている状態にあるため,半月板にストレスがかかり続けるためです.半月板は可能な限り温存していくことが膝関節にとって重要な要素になります.

 

②半月板損傷の手術療法

保存療法でも痛みが改善せず,膝のひっかかりが多くなり,ロッキングしている場合には手術を選択する必要があります.ロッキングしているということは半月板が損傷してめくれているということなのでそのままでは半月板は治癒することができません.

手術にて半月板を縫合することで半月板を治癒することが可能になります.ただし損傷している箇所によっては縫合しても治癒しない可能性があるため,その場合には半月板は切除することになります.

原則当院では半月板は縫合し可能な限り半月板を温存するようにしています.これは半月板を切除することにより膝関節の変形と軟骨損傷が進行するためです.これらは長期の報告もされており,それらをまとめると『一般的に半月板切除後10年以上の経過において約80%に人が満足しているが,約50%にX線像上で膝の変形を認めた.またその程度は半月板の切除量に依存していた』とされています.

また半月板切除術後の膝関節の変形に関連する危険因子として,①女性,②半月板切除量が報告されており,術後成績に影響を与える要因として①軟骨変性の程度,②半月板切除量,③膝関節の安定性,④手術既往などが挙げられています.

 

当院では関節鏡を用いて半月板を手術しています.膝蓋骨(お皿)の下に2カ所穴をあけ,そこから関節鏡の機械を挿入します.半月板の状態を確認し縫合可能かを判断します.縫合可能な場合は専用のデバイス(半月板を縫合する道具)を用いて上記の穴を利用して縫合します.手術時間は程度にもよりますが約30分程度になります.縫合が困難な場合には損傷した半月板を最小範囲で切除します.

 

術後経過は半月板切除の場合は痛みに応じて全荷重歩行が可能になり,松葉杖の期間は1~2週間程度になります.

半月板縫合の場合は術後1週間は免荷となり術後2週目から1/3部分荷重,3週目から2/3部分荷重,4週目(術後3週)から全荷重歩行になります.そのため入院期間は約3~4週程度となります.

 ①半月板損傷の保存療法
 ②半月板損傷の手術療法
7.半月板損傷のリハビリテーション

当院で用いている半月板縫合用の各種デバイス.ArthrexのHPより引用

7.半月板損傷のリハビリテーション

 

半月板損傷のリハビリテーションの要点は以下のとおりです.

 

1.半月板切除と縫合では注意する点が異なります.

2.半月板切除術後は特別に制限はありませんが,切除した部分は荷重分散や衝撃吸収機能がなくなるため,衝撃を与えないように活動量を制限する必要がります.

3.半月板縫合術後では縫合した部分に負担をかけないようにします.術後の荷重制限や膝屈曲可動域を120°までに制限したりします.

4.半月板縫合術の方が制限期間が長く,スポーツ復帰までの期間も長くなります.

 

①入院リハビリテーション

原則として以下の内容は半月板縫合術に関して記載します.半月板切除の場合は特別な制限はないため,膝の曲げ伸ばし,筋力トレーニングも早期から可能になるため病院リハビリテーションでの制限はあまりないためです.

 

1)手術翌日

術後翌日:回復室から病室まで状態を確認しながら移動をします.車いすまたは松葉杖を使用します.午後からは状態が安定していればリハビリ室にてリハビリテーションを行います.超音波や低周波などを用いて疼痛の緩和や組織の改善を行っていきます.膝関節は装具で保護しているため腫脹改善させるアプローチや股関節・足関節などの患部外トレーニングなどを行います.半月板縫合の場合,膝関節はまだ動かせないのでそれ以外の部分を動かしていきます.

 

癒着を起こしやすいポイントとして

 

1.術創部の皮下組織

2.膝蓋下脂肪体

3.  半月板神経支配領域の筋肉周囲(過緊張による) など

 

が挙げられるためそれらの組織の滑走性を改善していきます.これらは安定した膝関節機能を獲得するために基本継続していきます.


 

術後7日まで:上記に加え膝関節を動かさない大腿四頭筋のトレーニング(Quad settingやSLR)を行います.荷重は1週間免荷またはつま先接地で荷重をかけないようにします.膝関節の曲げ伸ばしは1週間は半月板縫合部の保護のため行いません.それまでに膝関節の腫脹や皮下組織の滑走改善を行い,膝を曲がりやすくさせる準備をしていきます.

 

 術後1週間後~:体重の1/3から部分荷重を行います.固定の膝装具から可動性のある膝装具へ変更します.可動域訓練初期は半月板縫合部の違和感や過緊張からあまり膝が曲がりません.そのためCPMの機械による可動域訓練を行います.術後2週間の膝関節屈曲の目標は90°です.退院までに120°を目指します.術後1週時点で100°を超えていると術後経過はスムーズになることが多いです.

 

半月板損傷の大部分は中~後節が多く,膝関節屈曲120°以上の曲げは縫合した半月板にストレスがかかるため3~4ヶ月は行いません.

 

 

術後​2週間後~:体重の2/3での部分荷重歩行へ移行します.片松葉杖になります.

半月板切除術の場合は術後2週間程度で退院になります.

 

術後3週間後~:全荷重歩行が開始になります.松葉杖がなくなりますが,状態に応じて片松葉杖を使用することもあります.膝の屈曲可動域が120°獲得できていれば階段昇降訓練を開始します.低負荷でのスクワットやエルゴメーター,踵上げのトレーニングなども行っていきます.

 

術後3-4週間後:歩行が安定し,膝関節屈曲可動域が120°獲得できれば退院の運びとなります.術後経過により膝可動域の獲得が遅れる場合もあります.退院時には歩行が正常には戻っておらず,膝の筋力,可動域なども不十分であるため外来リハビリテーションへ移行していきます.

 

 

②外来リハビリテーション


 

ここからは外来リハビリテーションについてご説明します.退院後は復職可能ですが,仕事でしゃがみ込みや重量物を持つ仕事など膝(半月板)に負荷がかかる場合には制限を行うようにしてください.半月板の縫合部分が安定するまで(2~3ヶ月)は負荷をかけないようにすることが重要です.

日常生活での制限は膝を120°以上曲げないように気をつけ,あぐらや横すわりやしゃがみ込みなどに注意をする必要があります.

 

外来リハビリテーションは膝関節の動きに制限がなければ週1回程度を目安に行います.膝の曲げ伸ばしが困難な場合には週2回程度外来リハビリテーションを行うことをおすすめします.

 

術後2ヶ月から機械を使って膝の筋力を測定します.筋力が健側(健康な膝)の90~100%出せることができ,膝の曲げ伸ばしも健側と同様になれば外来リハビリテーションは終了になります.スポーツ復帰を目指される方はパフォーマンスのチェックをして問題がある場合はリハを継続して安心してスポーツ復帰ができるようにしていきます.

 

ジョギング,ランニングは3~4ヶ月を目標にし,徐々にスポーツ活動に参加していきます.スポーツ復帰は半年を目安に行います.

 

半月板切除の場合は縫合に比べスポーツ復帰の目安は早く3~4ヵ月程度ですが,徐々に負荷量を上げていかないと切除した部分の軟骨にストレスがかかり,炎症や関節水種などを引き起こしやすいため注意が必要です.活動性が高く,関節に負荷がかかりすぎると離断性骨軟骨炎や骨壊死などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります.そのため最初は慎重に新しい関節を慣らしていくように運動を行っていきます.

 ①入院リハビリテーション
 ②外来リハビリテーション
bottom of page