​外側変形性膝関節症の治療と手術(遠位大腿骨骨切り術:DFO)について

DFO(Distal Femoral Osteotomy)

遠位大腿骨骨切り術

 川田整形外科では2019年より遠位大腿骨骨切り術(以下DFO)の手術を開始しました.従来のHTO(高位脛骨骨切り術)は内反膝,一般的にはO脚(下図)と呼ばれる膝のアライメント不良に対して行われる手術で,HTOは脛骨(膝下の骨)を骨切りします.DFOは外反膝,一般的にはX脚(下図)と呼ばれる膝のアライメント不良に対して行われる手術です.

DFO.png

外側の変形性膝関節症

外側

内側

アライメント.png

 O脚      X脚                正常

HTO対象   DFO対象

Double Level Osteotmy

DFOの手術をすることで膝の荷重ラインを外側から正中位に改善させることができ,痛みを取ることができます.

 外反アライメントは先天的なものや外傷後,半月板切除後など様々な条件から生じることがあります.特に外側半月板切除の既往がある場合は関節軟骨の損傷を生じることが多くなります.この外反膝のアライメント不良は大腿骨の外側に過剰な負荷を与え,外側の変形性膝関節症(上図)の進行リスクを増加させる可能性があります.また,関節内での軟骨破壊の摩耗量は,外反変形の程度と相関することが報告されています.

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 川田整形外科では外側性の変形性膝関節症に対する治療は関節注射や薬物療法,リハビリテーションなどを併用する保存療法と,内側の大腿骨を切除して閉じるCWDFO(内側楔状閉鎖式遠位大腿骨骨切り術:Closed-wedge distal femoral osteotomy)の手術を行っています.

 外側の変形性膝関節症は内側の変形性膝関節症と比べ初期の痛みが少なく,関節軟骨の摩耗があっても日常生活を送れることが多くあります.そのため,関節軟骨損傷が知らない間に進行していることもあります.

 

 初期のころや関節軟骨損傷が進行していない状態であれば保存療法を用いること痛みを抑えることが可能です.しかし,関節軟骨損傷が進行していた場合には痛みが強くなり耐えれなくなることもあります.その場合には保存療法では痛みを抑えることが困難になるため,手術適応となります.

 外側型の変形性膝関節症の手術は当院で行っている骨切り手術以外に人工膝関節置換術があります.骨切り術は骨切りした部分が骨癒合すれば日常生活やスポーツ活動においての制限はありませんが,人工膝関節は制限を伴います.骨切り術は初期のころは強固な固定材料がなく,骨癒合が不良な場合や合併症が多く見られていましたが,近年は強固な固定材料が登場し,骨癒合も良好で,偽関節率も低くなっています.

 DFOの適応は65歳以下,比較的膝関節の可動域が保たれており,大腿骨の外側に限局した関節症が好ましいとされています.骨癒合の観点からも年齢は若い方が術後良好な経過をたどることができるため,早期での手術を実施することをおすすめします.手術に関してですが痛みが悪化し,歩行が困難となり,膝の可動域が悪くなった期間が長ければ長いほど膝機能は低下するため,術後の膝機能回復が難しくなることがあります.逆に痛みはあるが,歩行は可能で,膝もよく曲がり,力もある状態であれば比較的術後の経過は良好な方が多いです.これらはHTOの場合も同様です.このような時期は手術をする決断が難しい時期ですが,関節軟骨の損傷を進行させないためにも早期の手術が好ましい場合もあるため,主治医にご相談ください.

 また肥満(BMI 30kg/m²)や喫煙は術後の予後不良の因子とされているため注意してください.この手術の禁忌は炎症性疾患(リウマチなど),重度の関節損傷,重度の外反変形などがあります.骨切り術が実施可能なアライメント角度があるため,X脚が進行すると手術が困難になる場合があります.

DFO手術の​流れ

実際の手術手順

関節鏡にて軟骨の状態を確認します.

​必要に応じて半月板や軟骨修復の処置を行います.

1.

大腿骨内側の皮膚を切開し,内側広筋や軟部組織を剥離します.

2.

大腿骨内側を2面骨切りを行い,骨片を取り出し理想の角度に閉じます.

3.

術中にレントゲンにて角度を確認し,骨切り部を閉じた状態でプレートとスクリューを固定します.

4.

洗浄後,切開部分を縫合し,ドレーンを留置します.

5

DFOとVM
手順2の図
DFOcut.png
手順3の図
DFOの骨切り
手順4の図

​DFOのリハビリテーション​

 DFOのリハビリテーションは以下のような特徴があります.

​1.骨癒合を最優先するために,荷重時期が遅くなります

2.術後初期は骨切り部への負担を最小限に行います

3.患部を主とした筋力トレーニングがHTOよりも遅くなります

4.膝ROM(可動域)獲得がHTOに比べ遅くなります

  術後翌日より歩行訓練(免荷:体重をかけないを行います.術後1週間は組織修復の保護や疼痛や浮腫のコントロールを目的にアイシングや超音波,低周波,リンパドレナージなどを中心に行います.術後1週目から膝の屈曲可動域の改善はCPMという機器を用いて行います.

 荷重時期はHTOでは術後1週目から行いますが,DFOの場合HTOよりも1週遅れて部分荷重を行います.2週目より体重の1/3,3週目より体重の1/2,4週目より体重の2/3,5週目で全荷重歩行を行います.全荷重までに患部に負担のかからない筋力トレーニングや筋再教育トレーニングを行います.膝屈曲の可動域はHTOなどと比べやや遅くなりますが退院までに120°以上の獲得を目指します.全荷重が可能になったころに退院となるため,その時点でのゴールは正しい歩行が可能になることとなります.

 その後外来リハビリテーションが開始となり,膝屈曲可動域の改善と大腿四頭筋(特に内側広筋)の筋力を改善させます.手術時に内側広筋をめくり,その直下にプレートを埋め込んでいるため術後侵襲により術後初期は著明な機能不全を生じます.そのため浮腫や痛みが改善した後,積極的に機能を改善していく必要があります.外来リハビリテーションの目安は週1~2回ですが,リハビリテーション開始時は膝の屈曲可動域制限と内側広筋の筋力低下が依然あるため週2回以上のリハビリテーションをおすすめします.

 体重負荷を利用した筋力トレーニング(CKCex)は6~8週から開始となります.それ以前に積極的に筋力トレーニングを行いたくなりますが患部の安全性を考慮して骨癒合が安定するまでは控えることが推奨されています.

 3ヵ月目からランニングやスイミングなど Low Impact weight ex(低負荷の衝撃トレーニング)が開始可能となります.時期に達したからすべて可能になるわけではありません.その時点の膝の状態や疼痛,筋力回復状況により調整を行いますので,主治医と担当理学療法士に相談をしてください.3ヶ月目より膝の筋力測定を行います.

 6ヵ月からはほぼ制限がなくなります.活動的なトレーニングが可能になる時期です.ただし負荷量が急激に上がると疼痛や関節水腫(水がたまること)が生じることがあるので負荷量は徐々に上げていくことが重要です.膝伸展の筋力測定では患健比80%以上(手術した筋力が良い方の筋力の80%以上)を目指しましょう.筋力に応じてスポーツ復帰を目指します.

​12ヵ月を目安に抜釘術と再鏡視を行います.再度内視鏡で関節の中の状態をチェックし,関節軟骨や半月板の状態を確認します.処置が必要な場合は適宜処置を行います.

1.変形性膝関節症(O脚)の治療・手術(HTO)はこちら
2.前十字靭帯損傷の治療・手術はこちら
3.後十字靭帯損傷の治療・手術はこちら
4.重度の変形性膝関節症の手術(DLO)はこちら